2010年10月17日日曜日

[本棚から]ジャン・クリストフ(3)(4)ロマン・ローラン作 豊島与志雄訳

 初め少しを、若い頃に読みました。分厚い本を貸してあげた友の読後の感動の顔が忘れられません。いつか読んでみようと思っていました。その本は捨ててしまいました。


 その後数十年を経て 6ケ月かけて、岩波文庫の(1)(2)(3)(4)を読みきった。

 ジャン・クリストフとは、ライン河沿いの生まれのドイツ人で、純なるこころを持つ人生を闘争する音楽家である。作者の後記によるとベートーベンに境涯は似せているが、厳然と違うとのことだ。

 聖クリストフの像が中世の教会堂(ノートルダム寺院)の入り口に飾られているようだ。そこに「いかなる日もクリストフの顔を眺めよ。その日、汝は悪しき死を死せざるべし。」と言葉が掘り込まれている。作者は1890年から1910年の20年間、片時もクリストフと一緒でなかった日はなかったようだ。20年以上かけて作品は完成した。


 多くの女性を愛し、親友の死をみとり、官憲に追われ、その音楽は酷評に会い、ひるまずヨーロッパ各地に逃亡し、愛する人も亡くし、愛した人々の心と共に生き抜いていく。その死は、再生の予感をもって、闘争の人生を再び生きぬかんとする。


 この長編は、今後の人生でじんわりと教訓を生かしてくれるだろうと思っています。

ノーベル文学賞を獲得した作品でした。(10.10.17)