2010年5月26日水曜日

[本棚から] フォレスト・カーター著「リトル・トリー」

 1996年、横浜で単身赴任していたときに読んだフォレスト・カーター(1925-1979 インディアンの血が入っている)著「リトル・トリー」を1日1章で再読しました。純真なインディアンの生き様に目から鱗の気持ちとなり、心が洗われました。

その内の3章の挿話をご紹介しましょう。

 1839-40年13,000人のチェロキーが集団ごと順次オクラホマの保留地に強制移住された。この行進は涙の旅路と呼ばれている。(4,000人がなくなった)リトル・トリーの祖父の父がその中にいた。全てのチェロキーがそうしたわけでなく、祖父の父(仮に名をビッグトリーとしておこう)は、途中にとどまって自活した。とある木の下にあるかすかなしるしをみつけた。ビッグトリーは鹿の肉と銃とナイフをおいておいた。次の日、鹿の肉はなくなっていたが、銃とナイフはそのままで、新しく別のインディアンナイフとトマホークをみつけた。そこでビッグトリーは、とうもろこしを足してそこにおき、一日そこにいて、印の主を見つけた。その一家は12人の人達だった。末娘と先々結ばれた。ムクドリモドキの羽を髪に挿していたので「レッド・ウィング」とよばれた。柳のようなほっそりしたからだつきの娘で、いつも夜になると唄を歌った。
(ものをそっと人目につかずおいて、あげたともいわず、黙って立ち去る心と心を通わす控えめなインディアンの流儀に心うたれる)

 次はリトル・トリーががらがら蛇に襲われた話です。

 リトル・トリーは不気味な音を聞いた。正面を見ると、ガラガラ蛇が音を発しながら、リトルトリーをにらんで鎌首をもたげている。そばにいた祖父が「じっとして、目をそらすんじゃない」といって、リトルトリーと蛇の間に手を差し入れた。しばらくの後、蛇は祖父の手をかんだ。祖父は振り落とそうとして片方の手で頭を押さえつけた。ガラガラ蛇は祖父の腕に巻きついてあばれた。やがて、祖父は勝ったがその場でうずくまった。トリーはあわてて祖母を呼びに行った。大急ぎでかけつけた祖母はかまれた祖父の手をナイフで切りさき、血を吸い出しては吐き出した。なんども繰り返し、小康を得た。つめたくなりかけた祖父の体をトリーは体をよせ温めた。祖母は着ていた服を脱ぎ、祖父に着せ、自分も裸となり、祖父を温めた。祖父は一命をとりとめた。トリーは「すまない、おじいちゃん」といつた。祖母は「おじいちゃんが蛇にかまれたのは誰のせいでもない。起こったことは誰のせいにしても始まらない。」といった。


 もう一つは、ローソクと星の話です。

 あるユダヤ人が、リトルトリーの家でろうそくをともしてお祈りした。トリーが言った。「何をしているの」
家族が離れていても、同じ時間にローソクをともしてお祈りすると、
はなれていても一つになれるのだよ
リトルトリーはろうそくのかわり、天狼星を見て祈るから、と祖父にも見てほしいと頼んだ。
リトルトリーは孤児院にいれられた。
天狼星を見てがんばった。星を通じて心を通わせた。一人ではない。つながっている。

 心の内にある本それが「リトルトリー」です。リトルトリーは木と話が出来ます。鳥とも会話できます。インディアンは自然と共に生き、自然を大切にする「環境」のことを教えてくれる本でもあると思いました。(10.5.26)

"Let's watch movies"「RAILWAYS」【レイルウエイズ】

 先日、ウメダピカデリーで「RAILWAYS」の試写会をみました。

 仕事に猛烈に励む49歳の一人の男がいる。工場閉鎖の大役をになわされ、成功すれば、取締役の地位が目の前にある。妻は、ハーブの活用に凝っている。娘は、大学生で就職活動に入ろうとしている。

 どこにでもある 日本の一風景である。

 その男のふるさとは出雲だ。小さい頃の夢は電車の運転手になることだった。母の病状が思わしくなく、業務多忙の中、出雲に帰った。・・・・・・

 男を演じるのは、中井貴一、男の妻は、高島礼子、娘を演じたのは本仮屋ユイカ、「大人が夢を見てもいいんですね」49歳が電車の運転士に大変身する物語だ。

 この映画のよさは、男の夢に焦点を当てながら、それぞれの生き方にもマルチフォーカスして生き方を見つめるようにしていることだ。

 製作総指揮は阿部秀司 監督 錦織良成 5/29より。 RAILWAYSレイルウエイズ

2010年5月25日火曜日

"Let's watch movies "「クロッシング」

 北朝鮮の脱北者を描いた、(2008年)韓国映画「クロッシング」107分‎‎ - 社会派ドラマ‎ - 監督: キム・テギュン - 出演者: チャ・インピョ他を シネマート心斎橋で見た。簡単に感想を記す。

 新聞、TV等の情報で知っていた、中国との国境に近い北朝鮮の実情が、赤裸々に描かれていた。食事と薬に困る人達、浮浪者と化している子供の悲惨な姿、強制収容所の人々の日常の労働と、不潔な環境、中国国境の河を夜陰に渡る人達、中国にわたると物質で溢れる町、ようやくたどり着いた、韓国の豊かさ。

 同じ人間が、北でいたときの食生活と南での飽食を経験する、理不尽な現実を、「神様、あなたはどう思うのですか」と聖書を手にして問う姿に、思わずドッキリとする。朝鮮にキリスト教が普及していることがうかがえもする。

 国は変わっても 家族のことを思う想いは一緒なのだ。政治体制の違いが生んだ、地獄と天国、人間、国、の落差をつくづく感じ、今、日本にいる幸せを思う。

 いつかは どうにかなる 南と北 だろうが、「クロッシング」してはじめて知る この現実、いたましい。 韓国の人達が描くが故に、せつなさがある。 「クロッシング」(10.5.25)

2010年5月19日水曜日

"Let's Watch Movies" 「オーケストラ!」

 久し振りのことです。 「笑い、 泣き、 感動! 」しました。

 映画はロシアでの 元指揮者や元音楽家の 冴えない日常が 1枚のFAXに 発想した 奇想天外の パリの ブレイエル に 出演しょうとする 物語だ。

 それは ・・・・・

 ボリショイ交響楽団で劇場清掃員として働いていた、元ボリショイオーケストラの天才指揮者だった中年男アンドレが、偶然目にしたFAX「ボリショイ交響楽団へのパリでの公演依頼」の虜となり、かっての音楽員今ではタクシー運転手、蚤の市業者、ポルノ映画の効果音担当者・・・に声をかけ、実現に向かっていく。

 そのマネージャーには、アンドレのかっての夢をくだいた共産党幹部をマネージャとして起用し、共産党幹部はパリでの国際共産党大会の出席に"夢"を持ち、アンドレはチャイコフスキーのバイオリン協奏曲再演の"夢"をもち、それぞれのパリに結集する思いを実現に向かう。・・・・

 もう一つの主演者は音楽だ。チャイコフスキー「バイオリン協奏曲」を軸に、モーツアルト、バッハ、ドビッシー、マーラー・・・

 驚きがいくつも埋め込まれている。初めは単なる辻弾きかと思っていたバイオリニストが、天才的な技を披露する。他にもいくつかある。

 監督・脚本 ラデュ・ミヘイレアニュ 主演 アレクセイ・グシュコフ 「イングロリアス・バスターズ」のメラリー・ロラン フランス映画2009年124分。


 大阪では梅田ガーデンシネマで上映中です。HP音が出ますがご参考下さい。


 卯月曇り 妻と一緒に 「オーケストラ!」 (10.5.19)