ウォルフガング・ムルンベルガー監督「ミケランジェロの暗号」(2010年オーストリア映画)は、第2次世界大戦の際、ユダヤ人画商一族カウフマン一家が、密かに保存するミケランジェロの素描画をめぐって、ナチの争奪に対する、抵抗の物語。別に読んでいた、エクトール・フランシアーノ著「ナチの絵画略奪作戦」(ヒトラー、NO2のゲーリングは名画をこよなく好んでいた。ヒトラーはユダヤ人画商からアーリア人のかいた名画を収奪して、オーストリアのリンツに美術館を建ているつもりだった。現在も略奪したナチの絵画が、モドリ手を失った名画がルーブル・エルミタージュ他に保存され、一般の閲覧に供されている。)も背景を知る上で有益だった。
この作品の見所を3点まとめてみました。
① 戦前(不穏なユダヤ人に対する風当たり)戦中(一挙に、ユダヤ人が追い詰められて
収容所へ移送される危機が生まれる)戦後(アメリカ軍が進駐する)と画商をとりまく世界が変転していく。
② 主題は、ナチスがムッソリーニに協力関係を強めるため、カウフマン一家のもつ、ミケランジェロのデッサン画を獲得して、提供し有利に同盟関係を展開しょうとすること。そこのところがアーリア系の一家の使用人が、からみ、カウフマンの1人息子との熾烈な知恵を尽くした対決が面白い。
③ ユダヤ人をものともしない人種観や、ナチの軍部にあることなかれ主義や独裁者の「ミケランジェロ獲得」の絶対命令の中で性切羽詰った軍部の対応等々、手に汗握る展開がある。戦後のあっけらかんとした変転も、「戦争は何だったのか」と思わせてくれる。
娯楽大作でした。シネリーブル梅田で公開中です。(☆☆☆☆)(‘11.9.27 中川 昌弘)
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