2009年5月9日土曜日

映画「四川のうた」―中国成都の軍需工場、過去と現在―を観て

 ジャ・ジュンクー監督「四川のうた」(原題「24城記」)は、瀋陽から50年前に人と装置が移動した秘密軍需工場がこのほど解体され、3万人の従業員と敷地内の家族(学校・病院もあった)は解散され、跡地の一部はマンションにと変貌していく瞬間をドキュメンタリータッチで証言のうち、3人は俳優と、その他の生の人々をそのまま起用して製作された。この作品の見所は6点にまとめてみました。

① 現在のものと人に焦点を当てて、過去50年の思い出を約100名の人に語らせたあるいは静止画としてみせたことがユニークな着眼点だった。
② 3人の俳優はあたかも当事者として、たんたんと語った。これは真実の人か、俳優かと頭を悩ませた。そこのところが面白い。
③ 中国のことわざ 英国イェーツの詩 が啓示的に配されていて。深みを与えようとしていた。画面が瞬間で切り替わり残像として残りにくかったのがおしい。
④ 日本とのかかわりで、山口百恵の歌とTVショットが飛び出してくる。中国で文化大革命後の空白の時期に、山口百恵のTV「赤い殺意」が中国でブームを巻き起こした背景として、そんなこともあったのかと、日本人にサービスしてくれるのはうれしい。
⑤ 「長江哀歌」もジャ・ジャンクー監督作品で長江ダム建設で変わり行く姿を映像に残したが、「四川のうた」も国営軍需工場の解体の一こまを記録に残した。歴史として記録として残ることはすばらしいことだと思う。
⑥ なまの成都の貧しい電線のぶら下がる建物の一室の姿と富めるドイツ車を乗り回す姿と垣間見える一部の富裕層のいる対比を描いていた。これが中国の現在だと。

いろんな意味でおもしろい試みの映画でした。北野オフィスが製作に協賛していました。(WELL BE)

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