家族の苦しみと戦いを描く物語。世界の映画祭(ロッテルダム・東京フィルメックスなど25以上)で賞をとっている。
主人公はチンピラヤクザ(ヤン・イクチュン監督が主役を演ずる)、道を行き交う少女につばをかけた。ここから物語りは始まる。少女は高校3年生。ただものではない。家庭に悩みを持つ。父はベトナム帰還兵で、心の障害を持つ。チンピラヤクザの父も家族に暴力をふるって妹を死にいたらしめ刑務所に服役して孤独に生きている。両方とも、母が死亡。殺伐たる家族たちの風景。チンピラヤクザは不良債権を暴力を使って回収するのを業としている。こころのよりどころは姉の息子である。高校生少女の兄も定職につかず、少女を悩ませる。
こんな二人がソウルを流れる漢江の土手でしみどみと語り痛みを癒しあう。
事態は急転していく。
雑誌の2010年度の優秀外国映画一位をとり、シネマート心斎橋で異例の延長上映を行っていたので見る事が出来た。最近、台湾映画「モンガに散る」という映画も観たが、若いヤクザの抗争で、家族がからんでいた。一般的に、現役世代の家族が平穏であることは少ない。日本の園子温監督(「冷たい熱帯魚」2/5封切り)は「おだやかな家族が登場する日本の映画やTVドラマは、現実を癒す麻薬であり、麻薬は常用すれば更なる癒しを求める。」という主旨のことを日経新聞1月12日夕刊に載せていた。符合するかのように韓国のこの映画は、日本のそれらとは逆にどろどろ生々しい家族の闘争を描いている。
混沌としているはずの日本の家族の今と、混沌としている世界の今を考えさせる映画だった。(11.2.4中川 昌弘)
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